リトゥング〜複雑なケニア的ブギ−を奏でよう!〜




*ルヒア族とは?

ルヒヤ族とは?ンゴマ資料室〜スクティの章〜を参照して下さい。


スクティがルヒア族の中でもイダホ・ティリキ・イスハと言う3つの種族がオリジナルであるように、

このリトゥングはウガンダとの国境に近いエリアに住むブクスと言う氏族が本家である。

スクティの章でも述べたが、ルヒア族と言うのは一つに括るのはチョッと無理があるような気がする。

テソ族のアデウデウに似た弦楽器を持つサミアと言う氏族は、ルオ族と隣接していて、

彼らの名前も全くルオ族と同じような名が多いし、多くの人がサミア語を話すと同時にルオ語も堪能だ。

兎に角

このリトゥングに関しては“ブクス”と言う氏族達が本家本元なのだ。


*リトゥングとは??

アルファベットではLITUNGUと記され、同じような音のRITUNGUとは別の楽器。

Rの方のリトゥングはクリア族の弦楽器、丁度、ルオ族のニャティティによく似ている。

学者達の間ではリラと呼ばれる種類だが、この形の楽器が西ナイル語群に属するルオ族を始めとして、

近隣のバントゥ語群であるクリア、キシィ、ルヒア族に見られる。もう既にその楽器は絶滅したらしいが、

カレンジン族もこのリラを用いていたらしい。若林忠弘氏によるとオリンポスの壁画に描かれて云々だそうだが

まあ、実際に自ら奏でる者を対象としたこのNGOMA研究所としては、西ケニア・ウガンダにはこのタイプの

ハープ的な弦楽器が多く存在し、これが少し移動するとテソ族のアデウデウのような帆掛け船型のモノになる。

取り敢えず、ケニアではルオ族のニャティティ、キシィ族のオボカノ、クリア族のリトゥング、そして、このルヒア族の

リトゥングが代表的なリラ系弦楽器だ。

リトゥングは7弦であり、ニャティティのようなサワリも無い。

チューニングについてはある程度幅を持った相対的なモノと思われる。

弦に関しては現在では全てナイロン弦を使用しているモノばかりだ。

持ち方=演奏スタイルは個人によってかなり差異があり、一口では言えないが、

演奏の方法(指使い)は共通性が見られる。

言語や表面的な楽器等で区別するとこのルヒア族は千差万別、とても一つの民族として共通項を

見つける事が難しいが、NGOMA的にみると実に簡単。

兎に角、ルヒヤ族のリズムは3つ 「ミカン・ミカン」 なのだ。

因みに、アニャンゴとして日本で活躍する向山恵理子は元々リズム感が淡白で日本人的であり

うねらない、訛らないリズムであったが、彼女が自分の楽器として何かを探しにケニアへ戻った時

同じく、日本で唯一のセンゲニャ叩き大西匡哉君の時の同じように僕が見立てた。

元々歌い手である彼女の良さが最大限に発揮される、武器となる楽器は、、、?

それは勿論、弦楽器だろうと思い、オボカノ、リトゥング、ニャティティと奏者を紹介し、実際に見て貰い

最後に彼女が選んだのが

矢張り、全て2・4で日本人にとって分かり易いニャティティだったのが印象に残っている。

しかし、僕の好みで云えば、ワケの分からん微妙なノリを持つのはオボカノと、そしてこの

リトゥングのなのだ。元々2・4で3を意識するよりも、元々3であるモノがニュアンスによって

「ミカン」 から 「ミッカン」 や 「ミカーン」 等に変化する方が自然なのかも知れない。

さて、このリトゥングは全て基本リズムは「ミカン」であり、奏者は足にヴィチェンジェ(ブクス語)と呼ばれる

ジャラジャラをつける。また、写真の物は中型で、フルのアンサンブルとなるとこれに大小のリトゥングが加わり

合計3本のリトゥングで複雑に絡み合ったアンサンブルを聴かせる。

そして、忘れてならないのが、シリリの存在。

シリリとはルヒア全体に見られる一弦バイオリン的な楽器で、同じ構造の物が矢張り、ケニア各地で色々とみられる。

現・ボーマス・オブ・ケニアの団員で、マシャリキでも欠かせぬマルチ・プレイヤーのワマルワ氏によれば、

「シリリが入らないアンサンブルは、只のデタラメでリトゥングでは無い」そうだ。

マシャリキ時代も、リトゥングは難しく、他に奏者が居ないので太鼓の音にかき消されてしまい

その複雑で心地好いリトゥングの調べは中々観客まで届かないのがジレンマだったが

録音と云う形を取れば太鼓の力強さもそのままに、3本のリトゥングが絡み合った不思議な感じと

シリリのメロディーが浮き出るかも知れない。しかし、残念ながら我が家にあるそのデモ・テイク以外

未だその夢のアンサンブルをケニアで聴く事は無いのだった。





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リトゥングの表面、皮の部分にサウンドホールがある。

これで中型のサイズ。基本的構造はニャティティ等と

同じだが、若干長細く、サワリの部分が無いのが特徴。




リトゥングの裏面、持っているのはWamalwa Lusweti氏。

氏は現・ボーマス・オブ・ケニアのメンバーでリトゥングの他

ニャティティやオボカノも上手に弾きこなすマルチ奏者だ。




ワマルワ氏のスタイルでの持ち方。立って弾く場合は

写真の赤い紐を袈裟がけにして弾く。しっかし!

絶対に演奏時に笑顔を見せないな〜この人は!!

 
*リトゥングの演奏映像


*Wamalwa氏によるリトゥングのチューニング方法の説明。

*Wamalwa氏によるリトゥングの奏法解説。

よく使う弦について、言っている事と演っている事が

違ったりするが(苦笑)大体、3、4、7弦から始め

上達するにつれて増やしていくのが良いようだ。

*2本のリトゥングによるデモ演奏。

若き日のワマルワ氏ともう一人による合奏のデモ演奏。

映像もキレイだし、二人とも張り切って素晴らしい

演奏なのだが音がこもり気味なのが残念だ。。。

*リトゥングのデモ演奏(ソロ)

メルーに住んでいる(らしい)奏者の演奏。

音もキレイに録れていて、演奏は簡素だが

その魅力は充分に伝わるだろう。

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