太鼓叩きが選ぶピアノ・トリオ



元々「ピアノってのは太鼓の一種じゃねぇか?」と思ってる僕が選ぶピアノトリオは、偏った好みで選ばれるのだ。
先ずはジャケがダサいMcCoy Tynerのスーパートリオズ。超怒級&怒涛の怪力&実は端正にも弾ける
“知性を持ったゴリラ” であるマッコイが豪華な2組のDRUM&BASSと繰り広げる正しくスーパートリオズだ。
前半が泣く子も黙るTony Williams&Ron Carter組、後半がJack Dejohnette&Eddie Gomez組との競演である。

正直、前半から聴くと後半まで辿り着けない事が多い(笑)
それだけカオス渦巻く凄い事になっている。後半も奥行きのある変化に富んだ好い演奏だけれど、
前半の物凄いインパクトの後では分が悪い。だから、これはCDでも前半後半と分けて聴くべき代物だろう。
じゃないと勿体無い。折角のディジョネットによる変幻自在且つ常に音楽的な演奏も、ゴメスの高い技術に
支えられた高音域の演奏も 「何だかしゃら臭せぇなあ!」 となってしまうのだ(苦笑)

それぐらい前半の演奏はバケモノ級の内容で、我々凡人は色んな意味で排気量の違いを思い知るだろう。
僕はトレーン時代にコンビを組んできたエルビン(ゴリ)とトニーは対極に居ると思っているので、この組み合わせは
どうかな?と一瞬不安になったが、そんな杞憂は無意味だった!凄いぞ?このAlbumは!!!

※何曲かフェードアウトになるが、そこまでが濃密なのであまり消化不良にならずに済む。
多分、延々と終わらんかったんだろう。。。


次がChick Coreaの“Now He Sings, Now He Sobs” 何を今更なんだろうけどさ(笑)
最近はこの時の録音全部が入ったコンプリート盤が出てて、そっちはそっちでかなり面白いんだけど、
1枚通して聴くならばやっぱりオリジナルの曲順がしっくりくるなあ。元々チック・コリアは苦手で他の面子目当てで
聴くばかりだけれど(カモメのAlbumとかさ)これだけはチック・コリアも聴いてる。
でも、ロイヘインズって云うのは素早い太鼓だよなあ!「アッ!?何かやったな!」と思うと、もうその場所に
居ない感じ。モンクと絡んだFive Spotでのライブ盤も凄く面白い。+吹きまくりのJ・グリフィンと何かこう
ワザと別の流れを作ろうとしてる感じのモンクってのが聴ける。で、ここでもヘインズは素早い太鼓なのだ。

Keith Jarrett Trioのスタンダーズ・ライブは兎に角、星影のステラに始まり「恋をするには若過ぎて」で昇天なのだ。
まあ、この3人は出会うべくして出会った感じだなあ。うまく言えないけど、其々が一番似合う相手同士だと思う。
このトリオの素晴らしさは僕が言わんでも誰もが認めるだろうから、写真も無し!
全部聴いたワケじゃないけど、今までつまらんかった事が無い。全部が圧倒的にクオリティが高い。

で、Joachim Kühn Trioによる“From Time to Time Free”
ヨアヒム・キューン自体がマイナーな為アレだけど、ダニエル・ユメール&“JF”ジェニー・クラークと組んだ一連の
トリオ作品は全て格好好い!マッコイにも負けないテンションの高さがキモだな。フリーの一歩手前的な
アプローチも大好きだし、素晴らしい非米国人JAZZ演奏家だと思う。怒涛のテンションに加え、印象派的な
美しい耽美な演奏も出来る凄い面子だ。やっぱしクラシックの下地がある土壌で、たまに生まれるこういった
毛色の違う連中の演奏は面白いな!そーいえば、日本もクラシックをバリバリ演っていた人がどっかで壊れて
他のモンに挑戦すると面白いんだよねぇ。先ず、普通に技術が高いし、そんでその人はそれだけアンテナが
高いって事でしょ?まあ、中には例外もあるけどさ(笑)多分、その人はクラシック演ってもつまらんのだろうな。

最後にRalph Petersonのトライアンギュラー! まだ痩せている頃のアルバム(笑)
これまた個性の強い女性ピアニストGeri Allenをフューチャーしてます。
1曲目のニューオリンズ風モンクでノックアウトです。見た目も派手だし怖いし、プレーも派手で
叩きまくりバカ的イメージが先行するラルフさんですが、音色やダイナミクス共に非常に繊細で使い分けが上手く
知性的なヤクザの典型だ。トランペットも上手だし作曲も上手。物凄く太鼓が上手な人だと思う。
一定のリズムがある時に、その流れに沿うもの、奥行きを持たせるもの、逆行して緊張感を持たせるもの、
色々なフィルがあるんだけれど、元々譜面が全くダメな僕はこういった感じで解釈し、自分の内部で整理してる。
ほんで、我々日本人にとってリズムの意味する処が迎合だから、大抵の我流で太鼓叩いている連中は
ここ止まりが多い。けど我流でもチョッとセンスのある奴は「何か違う」と気付いて勝手にその先にイケるんだな。
出会った頃の匡哉や荷野もそーだった。
もっとズバッと云えば、その一定のリズムを3でも4でも分割して、アタマをズラして裏の取りっこみたくすればさ
勝手に立体感や奥行が出てくる。緊張感を持たせる場合は、、、トニー・ウィリアムスやこのラルフさん。
ヴィニー・カリウタとかよく聴けば分かるんじゃないかな?
で、トニーは天才だから別格として、この手は特に叩き手のセンスが問われるんだ。
僕からみて、ヴィニーさんは挑戦者気質が強くて当たり外れが激しい(笑)クラプトンがガットと組んで、
ベックがヴィニーさんと組んだのが好い証拠じゃない?僕は逆の組み合わせも観てみたいけれど。。。
で、ラルフさんはハンパないぐらいセンスが好いと思う。流石はインテリやくざだ!(笑)
一つのコンセプトを追い続けるのも特徴で、この後暫く経ってから、D・キコスキを迎えてトライアンギュラーを
創っています。こちらは未聴なので是非!聴いてみたい。


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やっぱり遺伝子レベルで我々とは違うと思う。
それぐらい強力です。ジャケの格好悪さで知ら
れてないのかな?


まあ、特に俺が言わんでも名盤だわな。
R・ヘインズも凄いし、ヴィトゥスも変態だ。
一見ミスマッチなんだけどさ。


あんまり出回ってない、見つけたら即買いかな?


正直ラルフさんの名演は他にあるけど、
ピアノトリオってことで、これに決まりかな?

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